今日の電子書籍関連ニュース
電子書籍の案内役 ASAHI eBOOK AVENUEオープン
朝日新聞社のインターネット情報サービス「アサヒ・コム」上に4日、電子書籍を紹介する特設欄「ASAHI eBOOK AVENUE」がOPENした。
朝日新聞が読書面で取り上げた本で電子書籍化されたものを、書評と共に紹介している。現在は「甘酸っぱい思いでの青春SF」が組まれており、小松左京著の『日本沈没』や森博嗣著の『スカイクロラ』が取り上げられている。また、Pick Upでは朝日新聞出版から出版され話題になった吉田修一著の『悪人』や井上真央主演の映画が話題となった『ダーリンは外国人』が取り上げられている。FEATURE欄なるものもあり、そこでは「電子書籍ことはじめ」や「電子書籍どれくらい知っている?」など、電子書籍のイントロダクションページが用意されている。
電子書籍の書評がなされているのも、面白い。現在は田中優子さん、市川真人さんによる書評が公開されている。単なる、内容の書評だけでなく、電子書籍だからこその本のメリットにも触れられており、当サイトを閲覧した人々が電子書籍に少しでも興味をもつように工夫が施されている。
参考:http://www.asahi.com/culture/update/1114/TKY201011140003.html
ASAHI eBOOK AVENUE:http://book.asahi.com/ebookavenue/
紙と電子書籍の共存モデルの確立!角川「BOOK☆WALKER」12月始動
角川グループホールディングスは12日、角川コンテンツゲートを通じて電子書籍配信プラットフォーム「BOOK☆WALKER」を12月から始動すると発表した。
「BOOK☆WALKER」の特徴
文芸書、コミック、実用書、雑誌など幅広く特徴のある10社の出版社が集結してコンテンツを手依拠する点を挙げる。角川グループホールディングス傘下には、角川書店の他に映像分野や電子書籍分野に特化した企業が揃っているため、今回のような試みを行いやすかったのだろう。既存グループ会社とのメディアミックスの他、今後はTwitterなどのオープンプラットフォームとの連携やニコニコ動画のドワンゴと連携したサービスも提供していく予定だ。
オープンプラットフォームとして、他の出版社の参加も可能となっており、今後各社との話し合いと進めて行く行こう。目標としては「髪の本と電子書籍が共存するビジネスモデルの確立」を目指す。プレオープンとして、iPhone、iPad向けに約100作品の電子書籍を配信する。プレオープン後は、毎週20作品ずつ追加していき、来年7月には約1,000タイトルの電子書籍が配信され、さらに端末もAndroidやPCでも利用可能にする。2014年までに当プラットフォームで100億円の売り上げを目指す。
角川グループホールディングスの強さ
「角川映画株式会社」「魔法のiらんど」「角川コンテンツゲート」「アスキーメディアワークス」「エンターブレイン」など様々なコンテンツ配信形態を持つ企業をそろえており、電子書籍化にあたってもグループ内で大抵のことには参画しやすいことが、角川の強みだ。特に、魔法のiらんどは1999年にリリースされたサイトで、携帯電話での電子書籍(コミック中心)配信を行ってきた。その歴史は古く、現在電子書籍元年が訪れ多くの出版社が混乱期にある中、角川では以前から電子書籍市場に参入していたため、電子書籍の対応に落ち着きがある。
※角川コンテンツゲートって?
2005年に設立された角川グループホールディングス傘下の企業で、映像や電子書籍事業に特化したサービスを行っている。
参考:http://journal.mycom.co.jp/articles/2010/11/13/bookwalker/
電子書籍の違法配信
今月初頭に、日本の人気作家の小説の海賊版がApp Storeで販売されるという事件が勃発した。村上春樹の『1Q84』や映画が話題になった東野圭吾著の『容疑者xの献身』などが破格の値段115円〜で販売されていたのだ。
「誤字脱字だらけで、不自然な字間や、文字が追加されている個所もあったようです。値段も安すぎつ。不審に思った購入者が、版元の文藝春秋に問い合わせをしたようです。しかし、文藝春秋側も全く関知していない。そんなアプリがあることも、この問い合わせで知り、大騒ぎになった」と出版関係者は語る。もちろん、作者の東野自身もあずかり知らないという完全な無断販売・海賊版だったのだ。すぐさま、販売停止の処置を要請したという。厳格と言われる「App Store」でさえ、このような事態が起こる。今後、楽天や角川グループなど、日本の大手企業も次々と電子書籍業界に参入が予定されているが、こうした海賊版へのチェック機能はどこまで果たされるのか。まだ、電子書籍が浸透しておらず、DRM機能の議論の最中である今、さらに国内電子書籍市場を混乱させる事件であった。現在、各出版社が様々なコンテンツ配信形態を試みているが、それよりもDRMなど著作権に関する事項の取り決めを速やかに行い、一刻も早く国内電子書籍市場を確立することを最優先にすべきだ。
電子書籍端末徹底比較(1)〜iPad、Kindle編
iPadが発売され、早5か月が過ぎようとしている。国内の各社もiPadに対応した電子書籍端末を次々と発表している。今後、電子書籍端末あるいはスマートフォンの購入を考えている人々にとって、一番お勧めの端末はどれなのか?各端末ごとに特徴、価格を徹底的に比較して行きたい。
購入にあたり、一番考慮したいことは使用目的である。端末には大きく三つのカテゴリーがある。一つが電子書籍専用端末。読書することに的を絞って開発されている。二つ目にタブレットPC。これはiPadに代表されるようにインターネットはもちろん、様々な動画コンテンツも楽しめるものだ。そして最後にミニノートPCだ。使用目的の次にポイントとなるのが、ディスプレイと重さだ。快適な読書環境を手に入れるためにも、できるだけ目に優しいディスプレイと最軽量のものを選びたい。
なんと言ってもiPad
黒船来航で騒がれたiPadが絶大の人気を誇っている。スタイリッシュな外観、高精細なカラー表示、雑誌サイズの表示画面。
基本データ
リッチコンテンツ向け
iPadは高精細なカラー表示や、スクリーンのサイズから雑誌などのコンテンツをリッチコンテンツ化に適すると言われている。
出版業界の中でも比較的新しいディスカヴァー・トゥエンティワンはリッチコンテンツ向けという特徴を生かしたコンテンツ制作に積極的な姿勢を見せている。今年8月上旬から発売が開始されたiPhone/iPad向け写真集『STYLE from TOKYO』は新しい写真集の形を実現した。写真集のテーマは原宿ファッションである。現役大学生を中心に活動する株式会社ユニークとの共同で、写真集などに適した会社独自のビューアを開発し、写真集には埋め込み動画、サムネイル表示、スライドショー、著者自ら録音した原宿の雑踏の音などを再生できるようにした。単にファッションを見て楽しむ写真集ではなく、著者とモデル達とのコミュニケーションを臨場感たっぷりに体験できるようになっている。
個人向けと言うよりは、法人向け
現時点でのiPadは電子書籍などのコンテンツやアプリが少ないことから、個人が楽しむにはまだ不十分である。また、他の端末と比較してもわかる通り、重く、大きすぎるためにモバイル用途に向かない。実際iPadを使ってみたが、女性なら片手で操作するのは難しいくらいの重さであった。電車の中で文庫本を読むというような感覚では使えないと思う。個人で使うにしても、ノートPCを持ち歩くよりは軽量で薄いから代わりにiPadを持ち歩くと言った用途ぐらいである。(正直、周囲の人々のiPadの使用状況を見ていると、ほとんどネタとしてiPadを使っている。)
逆に、法人用途での人気はうなぎ登りであるという。移動中のちょっとした時間でもメールの対応やスケジュールの確認が可能なので、残業の削減と時間の創出につながる。端末維持費など、社員一人にかかる費用はますが、それ以上に残業削減、紙と印刷費用の削減の学が大きく、トータルでは大幅なコストダウンを実現できる。
また、セキュリティ上の問題でも、仕事用のPCを家に持ち帰らせない企業が多い昨今、iPadであれば端末を紛失した時に、ロックをしたりデータを消すことのできるロック・アンド・ワイプ機能、社員が使うPCにデータを入れず、サーバーでファイルなどを管理するシンクライアントシステムにも対応しているので安心だ。
ソフトバンクは2010/10/20に都内にて、法人企業向けセミナー「SoftBank Days2010」を開催した。ビジネスシーンにおけるiPadを活用した革新的なワークスタイルやソリューション事例について紹介する催しで、聴講者の多くが企業経営者や医療関係者であった。
世界最大手通販サイトが生みだしたKindle
現在のところ、世界で最も売れており、認知度もNo.1だ。ただし、現時点で日本での発売時期や値段は決まっていない。
文字もの読書の大本命
電気的に黒い粒子を移動させて描画する電子ペーパー搭載の専用端末で、紙のように読みやすく、小電力、端末がかるい(重さは500mlペットボトルの半分)ことが特徴。iPadに比べ、読書だけにこだわって設計されただけあって、とにかく軽くて目が疲れない。Amazonから生まれた端末ということもあり、購入できる書籍数は端末の中でも最大で何と70万冊、しかも購入時の通信料をAmazonが負担してくれる。モノクロ画面なので、雑誌などのコンテンツには向かず、本命は文字もの読書ということだ。PCを介さずに電子書籍がDL可能で60秒程で1冊の本が手に入ることや、フォント調節とページめくりスピードが向上したことから購入から読書にいたるまでストレスフリーに近い。
さらに、端末価格も他に比べて低価格なのが特徴。一番最新の第3世代では、初代の399ドル(約4万円)から半額以下の189ドルで提供される。また、書店の専売特許であった「立ち読み」を「中身!検索」によってWeb上でも可能にしたり、購買情報を駆使して「あなたへのおすすめ商品」といった情報を提供し、書店での「ついで買い」をもデジタルで実現した。
今年8月に発売されたKindle3で日本語に対応したが、電子書店である「Kindle Store」の日本語版がいつ日本でオープンするかは明らかにしていない。噂では今年12月に販売を模索しているようだが、現在の売上金額の80%を占める書籍タイトルについて電子化が一気に実現できなければ、発売には踏み切らないとのこと。
DRMについて(2)〜DRMなぜ必要?ユーザー側の不平と出版社の言い分
電子書籍の話題に付きものなのが、DRM(Digital Right Management)だ。「DRMなんて無い方がいい」と思っておられるユーザーはたくさんいると思う。それはそのはず。DRMが施されていなければ、電子書籍でも紙媒体の書籍同様に友人間での貸し借りが行えるし、端末を問わず、どのデバイスでも読書を楽しむことができる。ユーザーにとっては、DRMが無いことのほうがメリットは大きい。
ではなぜこれだけDRMが無いことのメリットが大きいのに、DRMが必要だと言われているのか?
ユーザー側の不平
まず簡単な例からDRMの必要性を見てみよう。先にも述べたが、DRMが施されていることにより電子書籍の貸し借りができないようになっている。電子媒体の場合、本を貸すとなると、結局は相手にファイルを渡すことになる。「本を貸す」ではなく、複製したものを渡すことになるのだ。これでは、紙媒体での本の貸し借りとは意味が違う。こういったファイル渡しなどしても、相手の端末ではファイルを再生できないようにするのがDRMの役割なのだ。
でも、このDRMには問題点がある。それは、お金を払ってファイルをDLした人が、DLした端末以外に自分が持っている別の端末でそのファイルを再生しようとしても再生できないということだ。例を挙げると、PCでDLした電子書籍を、スマートフォンでは再生できないと言った場合がある。これでは、せっかくお金を支払って手に入れたのに、自分のモノになったとは言い難い。この点に、ユーザー達は不平を唱えているのだ。その他にも多数、ユーザーがDRMを嫌う理由がある。以下に記述したのがそうだ。
- 紙の本のように貸し借りしたり、読み終えた後に古本屋に売りだすことができない
- 使用できる端末に代数制限がある
- 端末が変わると書籍も再度購入する必要がある
- DRM認証キー発行サーバがダウンした際に書籍が読めなくなることがある
- DRMに対応した特定のソフトウェアを利用しないといけないことがあり、そのソフトウェアにバグがあったり、かなりの容量を必要としたり、対応OSが限定されたりして利用しずらい。
- DRMにコストがかかり、そのコストをエンドユーザーが負担することになる。また、そのコストを負担しても海賊版を防ぐことはできない。
以上に挙げた他にも電子書籍に関する不満はあちこちで聞こえてきている。だが、DRMに不満が多数あるのと同様に、賛成の意見も多数ある。
出版社側・著者側の言い分
賛成意見の主の大半が出版社と著者だ。出版社はDRMがなくては、ビジネスにならない。同様に著者たちも、自分が長いスパンをかけて書き上げた作品をお金を払わずに読まれたら頭にくるだろう。出版物にDRMを施すことで、基本的には一つのデバイスでDLしたものは他のデバイスでは閲覧不可能にしている。つまり、書籍を読みたい人は一人一冊をきちんとお金を払ってDLしなければならないように制限がかかっているのである。
DRMのサービス事例〜bookendサービス/アイドック株式会社
bookendとは?
上記でユーザーが述べた不満を解決するのがアイドック株式会社の開発したbookendサービスだ。bookendとはPDF形式のデジタルブック配信ASPサービスで、PDF形式のコンテンツを保護しながらの配信が可能。マルチデバイス・マルチプラットフォームを実現し、ユーザーはコンテンツをクラウド上で保管、2台で共有できる。コンテンツの閲覧時にはTwitter連携や、紙の書籍の販売ページの誘導など、書籍プロモーション機能も充実している。
これまでのDRMサービスだと、マルチなデバイスやプラットフォームではコンテンツの再生ができなかったが、bookendサービスを導入することでDLした時のデバイスやプラットフォームでなくともコンテンツが楽しめると言うサービスなのだ。bookendサービスに興味を持たれた方は「bookend/from KEYRING.NET」http://bookend.keyring.net/index.phpを参照するとよい。
bookendの特長
マルチプラットフォーム・マルチデバイスを実現
アイドックはKeyirngFLASHにおいてもMac対応のDRM(デジタル著作権サービス)を提供していたが、「bookend」ではさらにOSやデバイスを選ばず、利用できるようにWindows/Mac2010年中/iPad/iPhoneに対応する。
クラウド同期、3台で共有
bookend Desktop(閲覧・書庫ソフト)を使って、クラウドストレージによるコンテンツの同期が可能。2台までのPCで同期ができるので、自宅PC・ノートPC・iPadなどどこでも自分の書庫を持ち歩いてコンテンツを楽しむことができる。
書籍プロモーションを強力にサポート
bookendは「全文無償公開」「フリーミアム」など書籍プロモーションを強力にサポートする。DRM(デジタル著作権管理)でコンテンツの不正コピーを防止するので、期間限定の無償公開などのキャンペーンに最適だ。その他にもTwitter連携・紙の書籍の販売サイトへの誘導など書籍プロモーションを強力にサポートする。
同じコンテンツで2つの配信方法
「オンライン(ブラウザ内)閲覧」、「ダウンロード閲覧」両方に対応。同じコンテンツで2つの配信方法が可能。配信方法は2種類。ブラウザ内で閲覧できる「オンライン閲覧」とbookend Desktopを使ったダウンロード閲覧。サーバーに設置するコンテンツは一つで、2つの配信方法を実現できる。
bookendの面白ツール〜角川グループパブリッシングによるプロモーション
角川グループパブリッシングから書籍プロモーションとして、第13回角川学園小説大賞優秀賞を受賞した『"菜々子さん"の戯曲』が全文公開されている。http://www.kadokawa.co.jp/sneaker/nanako-san/このサイトでは、bookendで全文公開して各ページにTwitterのタイムラインが表示されるようになっている。読者は自由に書き込みができる。電子書籍を起点にしたコミュニティを形成して話題を提供し、コンテンツの認知を拡大する。(※全文無料公開は2010/8/3/16:00にて終了している。)
東洋経済新報社のDRM機能
書籍の購入者にPDFを提供する。書籍の購入者にbookendで同じ内容のPDFを提供する。読者はPCやノートブック、iPadなどで活用する。同時に出版社は読者と直接結びつくことができる。詳細なやり方はこうだ。書籍を購入すると、その書籍には袋閉じで一冊一冊IDが振られている。書籍購入者だけが電子書籍公開に必要なIDを手に入れられるというわけだ。これがDRMの機能を果たす。正直このメリットがわからない。紙の書籍を購入しなければ電子版が手に入らないのなら、電子書籍化する意味がないのではないだろうか。この筆者の疑問に何かよい解答があったら、ぜひコメントをいただきたい。
DRMの有効性の賛否両論
ここまでDRMに関して一通り述べたが、DRMの有効性には賛否両論ある。DRMがあるからこそ電子書籍ビジネスが成立するという意見と、DRMが無い方が電子書籍の市場が潤うという意見である。
【賛成】DRMがあるからこそ電子書籍ビジネスが成り立つ/アイドック株式会社成井秀樹氏
電子書籍をビジネスとして成立させるためには、コンテンツの流通を何らかの方法でコントロールする必要がある。それがDRMだ、とアイドック株式会社代表成井秀樹氏は言う。
一般的に著作権保護技術であると理解されているDRMは、ビジネスの面では「コンテンツの流通を管理する技術」と考える方が適切である。DRMの基礎技術をベースにコンテンツ流通の多様性を保ち、閲覧ログやトレース機能または販売への同線などで電子書籍コンテンツの付加価値を生むことが期待できるということだ。
今後、電子書籍を商品として販売する際にその閲覧権限をどう処理したらいいのか。これをスマートに解決出来たところが電子書籍市場の勝者となるだろう。要はDRMを使っていかに多様なサービスを構築するかにかかっているとのことだ。
【反対】電子書籍にDRMは本当に有効か?/ボイジャー社『マガジン航』
出版社には強度なDRMをかけるほど利益があがるという考えがあるが、これは間違いであると否定するのが電子書籍販売会社ボイジャーだ。実際には、DRMのかかってないコンテンツの方が市場価値が上がり、長い目で見れば利益が上がると考えている。
この考えの根源として、Kaplan Publishingのデジタルマーケティングマネージャであるブレット・サンダスキーがDRMについて説いている。サンダスキーによると、DRMよりも顧客が友人とコンテンツを共有する選択肢を与え、それにより新たな顧客にリーチする方が得策だということだ。
この考えに同意しているのが、米Appleだ。米Appleは2010年1月6日、iTunes Storeで販売している全ての楽曲をDRMフリーで提供すると発表した。すでに手依拠している256kbpsエンコードでDRMフリーの高音質版楽曲「iTunes Plus」のラインナップが全曲に広がる形となる。
最後に
DRMについては賛否両論あり、どちらの意見が正しいのかは現段階では言い切ることができない。黒船がやってきたばかりでまだ日本の電子書籍市場は混乱期にあるからだ。色々と試行錯誤した結果、人々にとって最も快適な電子書籍の市場が形成されるようになるのだろう。iPadもまだ浸透しきっていない日本の電子書籍市場にはまだまだ可能性がある。電子書籍に関わる企業や出版社には、何事も恐れずチャレンジしてもらいたい。
参考
『なるいのDRM進化論』http://blogs.itmedia.co.jp/drmevolution/
DRMについて(1)
DRM(Digital Rights Management)とは
デジタルデータとして表現されたコンテンツの著作権を保護し、その利用や複製を制御・制限する技術の総称(デジタル著作権管理)。
デジタル化された書籍や音楽などの著作物は何度コピーしても、どんな遠距離を送受信しても品質が劣化しないため、インターネットの普及に伴って、著作者の許諾を得ない違法な配布・交換が増えている。これに対抗する手段として、流通・再生に制限を加えるDRM技術が注目を集めている。
技術について
基本的には、オリジナルのデータを秘密の符号形式*によって記録し、特定のソフトウェアあるいはハードウェアでしか再生できないようにすることで、第三者による複製や再利用を難しくする技術。
デジタル化されたコンテンツは複製しても品質が劣化しないことから、元ファイルから制限なくコピーを生成できる。デジタル著作権管理技術では、コンテンツ本体とは別に再生に不可欠なカギとなるメタデータを用意し、特定のユーザだけにそのメタデータを渡す。カギとなるメタデータを持たないユーザはコンテンツ本体だけを持っていても再生できず、またメタデータは再生するコンピュータやユーザに一意に対応するため、結果として無制限な複製が抑制されることを狙いとしている。
*符号形式:デジタル処理・伝送・記録のための、情報のデジタルデータへの変換方式のことである。変換されたデータを符号と呼び、符号から元の情報へ戻すことを複合と呼ぶ。
具体的な技術について
DRMを実現する仕組みには様々あり、その機構はコンテンツの形式や利用形態によって異なるが、ユーザが特定の再生ソフトウェアを使い、暗号化されたコンテンツを複合しながら再生する方式が一般的である。暗号化に使われるカギは再生ソフトウェア内に隠されているか、あるいはネットワーク上からDLされることが多い。この再生ソフトウェアがユーザのコンテンツ利用を管理するため、利用機関の切れた後には再生不能にするなどの処置が可能になる。しかし、この方法では暗号方式や再生ソフトウェアの内部構造がリバースエンジニアリングによって知られてしまうと、これたの制限を迂回するようなプログラムが作成できてしまう。この行為はシステムを破るという意味では「クラック」とも呼ばれ、DMCAはこのようなリバースエンジニアリングを法的に禁止するための強制力をもった法律である。
初期のDRM技術
DVDの映像信号を暗号化するCSSがある。CSSでは再生ソフトウェアに埋め込んだ固定カギを用いる単純な暗号化を使っていたため、リバースエンジニアリングにより鍵が一般に知られてしまってからは、ほとんどその実効性が失われている。WindowsMediaPlayer形式など最近のDRM技術ではネットワークから鍵をDLするものが多い。
既存のDRMの多くがソフトウェアのみで機能を実現するために、再生ソフトウェアをリバースエンジニアリングして修正を加えることでコンテンツはクラックされてしまう。そのため、近年ではハードウェアそのものにDRM機能を埋め込み、ハードウェアに不正な改造を行わない限りDRMで保護されたコンテンツを再生できないようにする矯正アクセス制御機構をパソコンに標準搭載することが提案されている。マイクロソフトはこのような機構として次世代セキュアコンピューティングベースを提唱している。
タブレットPC
タブレットPCとは
iPadの発売に触発され、多くの企業からタブレットPCなるものが続々と発表されている。それに伴い、タブレットPCの定義が変化しつつある。
そもそも「タブレット」という言葉を広辞苑で引くと、「コンピュータで、ペンで平画板をなぞって図形データを入力する装置」と定義されており、iPadなどはこの定義から大きくはみ出していることがわかる。
ウィキペディアによると、「タッチパネルディスプレイを搭載したハンドヘルド用途のパーソナルコンピュータを指す一般名称」と定義されており、このことから、iPad・Kindle・スマートフォン・その他、少しでもPCの機能を搭載していればタブレットPCということができるのかもしれない。
どのWebサイトでタブレットPCについて調べてみても、サイトごとに定義は異なり曖昧で、これといった明確な定義はなされていない。
IT用語辞典として活用されているサイトITmediaによると、タブレットPCには「ピュアタブレット型」と「コンパチブル型」の二通りあるそうだ。
ピュアタブレット型
液晶パネルの内部に通常のノートパソコンと同程度の処理能力を内蔵し、周辺機器への拡張性を具えている。
WindowsJournal
手書きメモ入力支援や、メモ文書の保存・閲覧・その他の操作をするアプリケーションソフトである。
ドッキングステーション
据え置き方の拡張機器。タブレットPC本体を上に置くだけで接続でき、内蔵のバッテリーに充電したり、ネットワークを通じて他のコンピュータと接続して、USBなどの標準的なインターフェースを通じて外部の周辺機器と接続可能。
本体には無線LAN機能が内蔵されており、外部のコンピュータと簡単に接続可能。
電子書籍のデメリット
ユーザ側
- 電子ブックリーダーのハード(有料)の購入がハードル
電子ブックリーダーを購入すつお金で、文庫本が何冊買えることか。
- 電子ブックリーダーのソフトウェア(無料)の入手が必要
PC機器に弱い情報弱者の人々にとっては、ソフトウェアのDLだけでも億劫である。
- 現金決済ができない⇒クレジットカードなどが必要
親の監視下にある大学生未満の子供たちにとっては、クレジット決済の電子書籍は購入不可能?
何度も読んで飽き飽きした本を売ることができない!保持か削除しか道は無い。
- 返品、返金機能が無い
面白そうだと思ってポチっと買ってみて期待外れであったとしても、返品ができないからお金をどぶに捨てたも同然。
購入費だけでなく、携帯電話での読書の場合通信費がかかる。
出版社側
- 販売額の低下による売上げの低下
- コピー流出のリスク
- 既存の流通、書店との関係悪化
- 従来のDTP技術を生かせない
今後の課題
- 埋め込みフォントが容易に抜き出せるので、DRMをかける習慣が必要
- 文字サイズが端末によって異なる
- 形式はTTCが不可でTTFが必要。TTFに変換してくれるツールなどが必要
- 注:TrueType Collection(TTC)とは、1つのファイルに複数のOpenTypeフォントを格納するためのファイルフォーマットで、拡張子は通常.TTCである。また、複数のOpenTypeフォントをただ単純に1つのファイルにパッケージングするのではなく、フォント間でグリフを共有して、ファイルサイズを抑えるための仕組みが備わっている。
- 現状全ての文字に対するフォントを埋め込むことしかできなかったため、ePubファイルのサイズが大きくなっている。必要な文字に対するフォントデータの埋め込みができるツールが必要
以下参考
電子書籍・ePubについて(株式会社フューズネットワーク)
https://docs.google.com/viewer?a=v&pid=gmail&attid=0.2&thid=12b19ac4b5da9db9&mt=application/pdf&url=https://mail.google.com/mail/?ui%3D2%26ik%3Db8eba3cc72%26view%3Datt%26th%3D12b19ac4b5da9db9%26attid%3D0.2%26disp%3Dattd%26zw&sig=AHIEtbSIywjqDvUmUZrqURjRrlYOz35KBA
TTCについて
http://vanilla-room.cocolog-nifty.com/blog/2008/02/opentype1ttc_0d3d.html
電子書籍のメリット
紙の書籍と比較した時の電子書籍のメリットを挙げてみました。補足が必要なものには注釈を付けてあります。
ユーザ側
- 購入後、郵送時間を待たずにすぐに利用可能。
- 検索性が高い (注:全文がデータとして保存されているので、本のタイトルは思い出せなくとも、読んだ覚えのある一部分を入力すれば検索に引っかかる可能性がある。)
- スペースを取らず、保管、管理が容易
- 価格が安い
- 複数の端末で利用可能(PC、モバイル、電子書籍リーダー) (注:フォーマットとビューア、端末の相互依存の関係から複数利用できない電子書籍もあるので注意。)
- 読者がその環境に合わせて、読みやすい状態に変更できる。
- メモを保存
- 自分専用の目次を作成可能
- 音声読み上げ機能を搭載できる
- 海外(世界中)の書籍が購入できる
- 地方でも発売日に購入できる
- 100万冊を超える無量の書籍がある
出版社側
- 在庫リスクがない
- Word、PDFから出版が可能 (注:Word、PDFファイルが取り込めないツールもあります。)
- 少量多品種の出版が可能
- 流通が日本全国、世界中も可能である
- 全世界共通の発売日
- 改訂が容易
- 注:コンテンツの更新にかかる時間が紙の書籍と比べて段違いに短いことが要因として挙げられる。紙の書籍で改訂版を出すには、著者から原稿を頂き、編集し、印刷したうえで取次を経て書店に並ぶ、という工程が必要だが、電子書籍では版元がデータを修正し、ユーザーが通信機能を使ってアップグレードするだけで済む。
- 価格のコントロールが容易(発売キャンペーン等)
- ブックオフのような中古での再流通を防ぐことができる
- 購入ユーザーのプロファイルが得られる(注:販売方法による)
- 流通コストの削減
以下参考
ITpro『電子書籍を買う理由』
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20100222/344920/
『電子書籍・ePubについて』/株式会社フューズネットワーク
https://docs.google.com/viewer?a=v&pid=gmail&attid=0.2thid=12b19ac4b5da9db9&mt=application/pdf&url=https://mail.google.com/mail/?ui%3D2%26ik%3Db8eba3cc72%26view%3Datt%26th%3D12b19ac4b5da9db9%26attid%3D0.2%26disp%3Dattd%26zw&sig=AHIEtbSIywjqDvUmUZrqURjRrlYOz35KBA
『マイクロソフト、電子書籍バリアフリー化に向けWord用アドイン無償公開 』
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20100406_359377.html