電子書籍端末徹底比較(1)〜iPad、Kindle編

 iPadが発売され、早5か月が過ぎようとしている。国内の各社もiPadに対応した電子書籍端末を次々と発表している。今後、電子書籍端末あるいはスマートフォンの購入を考えている人々にとって、一番お勧めの端末はどれなのか?各端末ごとに特徴、価格を徹底的に比較して行きたい。
 購入にあたり、一番考慮したいことは使用目的である。端末には大きく三つのカテゴリーがある。一つが電子書籍専用端末。読書することに的を絞って開発されている。二つ目にタブレットPC。これはiPadに代表されるようにインターネットはもちろん、様々な動画コンテンツも楽しめるものだ。そして最後にミニノートPCだ。使用目的の次にポイントとなるのが、ディスプレイと重さだ。快適な読書環境を手に入れるためにも、できるだけ目に優しいディスプレイと最軽量のものを選びたい。

なんと言ってもiPad

 黒船来航で騒がれたiPadが絶大の人気を誇っている。スタイリッシュな外観、高精細なカラー表示、雑誌サイズの表示画面。

基本データ
  • 重量:730g(3G+Wi-Fiモデル)、680g(Wi-Fiモデル)
  • スクリーン:9.7インチ
  • ディスプレイ:LEDバックライト、IPS液晶、タッチパネル
  • 通信:3G、Wi-Fi
  • 主要文書フォーマット:AZW、PDF、TXT、HTML
リッチコンテンツ向け

 iPadは高精細なカラー表示や、スクリーンのサイズから雑誌などのコンテンツをリッチコンテンツ化に適すると言われている。
 出版業界の中でも比較的新しいディスカヴァー・トゥエンティワンリッチコンテンツ向けという特徴を生かしたコンテンツ制作に積極的な姿勢を見せている。今年8月上旬から発売が開始されたiPhone/iPad向け写真集『STYLE from TOKYO』は新しい写真集の形を実現した。写真集のテーマは原宿ファッションである。現役大学生を中心に活動する株式会社ユニークとの共同で、写真集などに適した会社独自のビューアを開発し、写真集には埋め込み動画、サムネイル表示、スライドショー、著者自ら録音した原宿の雑踏の音などを再生できるようにした。単にファッションを見て楽しむ写真集ではなく、著者とモデル達とのコミュニケーションを臨場感たっぷりに体験できるようになっている。

個人向けと言うよりは、法人向け

 現時点でのiPad電子書籍などのコンテンツやアプリが少ないことから、個人が楽しむにはまだ不十分である。また、他の端末と比較してもわかる通り、重く、大きすぎるためにモバイル用途に向かない。実際iPadを使ってみたが、女性なら片手で操作するのは難しいくらいの重さであった。電車の中で文庫本を読むというような感覚では使えないと思う。個人で使うにしても、ノートPCを持ち歩くよりは軽量で薄いから代わりにiPadを持ち歩くと言った用途ぐらいである。(正直、周囲の人々のiPadの使用状況を見ていると、ほとんどネタとしてiPadを使っている。)
 逆に、法人用途での人気はうなぎ登りであるという。移動中のちょっとした時間でもメールの対応やスケジュールの確認が可能なので、残業の削減と時間の創出につながる。端末維持費など、社員一人にかかる費用はますが、それ以上に残業削減、紙と印刷費用の削減の学が大きく、トータルでは大幅なコストダウンを実現できる。
 また、セキュリティ上の問題でも、仕事用のPCを家に持ち帰らせない企業が多い昨今、iPadであれば端末を紛失した時に、ロックをしたりデータを消すことのできるロック・アンド・ワイプ機能、社員が使うPCにデータを入れず、サーバーでファイルなどを管理するシンクライアントシステムにも対応しているので安心だ。
 ソフトバンクは2010/10/20に都内にて、法人企業向けセミナー「SoftBank Days2010」を開催した。ビジネスシーンにおけるiPadを活用した革新的なワークスタイルやソリューション事例について紹介する催しで、聴講者の多くが企業経営者や医療関係者であった。

世界最大手通販サイトが生みだしたKindle

 現在のところ、世界で最も売れており、認知度もNo.1だ。ただし、現時点で日本での発売時期や値段は決まっていない。

基本データ
  • 重量:246g(Wi-Fiモデル)、240g(Wi-Fiモデル)
  • スクリーン:6インチ
  • ディスプレイ:Eインク
  • 通信:3G、Wi-Fi
  • 主要文書フォーマット:DLするビューアによる
文字もの読書の大本命

 電気的に黒い粒子を移動させて描画する電子ペーパー搭載の専用端末で、紙のように読みやすく、小電力、端末がかるい(重さは500mlペットボトルの半分)ことが特徴。iPadに比べ、読書だけにこだわって設計されただけあって、とにかく軽くて目が疲れない。Amazonから生まれた端末ということもあり、購入できる書籍数は端末の中でも最大で何と70万冊、しかも購入時の通信料をAmazonが負担してくれる。モノクロ画面なので、雑誌などのコンテンツには向かず、本命は文字もの読書ということだ。PCを介さずに電子書籍がDL可能で60秒程で1冊の本が手に入ることや、フォント調節とページめくりスピードが向上したことから購入から読書にいたるまでストレスフリーに近い。
 さらに、端末価格も他に比べて低価格なのが特徴。一番最新の第3世代では、初代の399ドル(約4万円)から半額以下の189ドルで提供される。また、書店の専売特許であった「立ち読み」を「中身!検索」によってWeb上でも可能にしたり、購買情報を駆使して「あなたへのおすすめ商品」といった情報を提供し、書店での「ついで買い」をもデジタルで実現した。
 今年8月に発売されたKindle3で日本語に対応したが、電子書店である「Kindle Store」の日本語版がいつ日本でオープンするかは明らかにしていない。噂では今年12月に販売を模索しているようだが、現在の売上金額の80%を占める書籍タイトルについて電子化が一気に実現できなければ、発売には踏み切らないとのこと。

率直な見解

 Kindleの実物を見たことも触ったこともないので、何とも意見しがたいが、あえて言うならば個人が単に読書を楽しむならiPadよりはお勧めできるということだ。端末の価格も比較的手頃であるし、失敗してもそこまで公開しないだろう。ただ、印象的に本好きの人向けのデバイスだなという感じがある。アプリを楽しみたいと言う人はiPadを買った方がいいと思う。